Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2025年3月 乙女座の満月🌕

そのプチプラバッグの登場が、
本当の意味で“物から心へ“時代が
変わる鍵となる?

●2桁3桁もお安い、そっくりバッグ登場⁈

CNNも取り上げたことから今、世界中の関心事となっているのが、”誰もが知る高級バッグにそっくりのプチプラバッグ”はどうしたら買えるのか?ということ。昨年末、世界最大の売り上げを誇るアメリカのスーパーマーケットが発売して以来、大変な注目を集めているのだ。
今や数百万から数千万円もしてしまう上に、そもそも手に入らない幻のバッグに”瓜二つのバッグ”が、2桁3桁違う1万2,000円から1万6,000円で買えてしまうことでSNSでも話題となり、たちまち完売となってしまったとか。

模倣品には違いないが、外側は牛革でも内側は合成皮革だったりして、デザインの1割程度が違っていればセーフだとも言われる世界。これを問題視して本家が動くようなことはないのでは?と言われるのも、そのネーミングは“ワーキング・クラス=労働者階級”をもじったもので、ぎりぎりグレーに挑んだシャレとして、”王様“は気にも留めないのではないか?と考えられるから。

で、この件を取り上げた様々な記事には「さよならハイブランド」といったニュアンスの内容もあったが、多分そういうことでは無いのだ。超高額バッグの所有を夢見ている人、根気よく店と顔なじみになってそれが買える日を待っている人は、そもそもこういうニュースに心を動かされるはずは無いのだから。



●ハイブランドが悪いのではない。
自分を見失うことがいけないのだ。

とは言え、巨大スーパーマーケットがそうしたリスキーな挑戦をするのにはやはり何らかのメッセージを含んでいるのだろう。
言うまでもなく、“土の時代”から“風の時代”へという宇宙規模の変化が、それこそジワジワと形になってきている1つの表れである気がしてならないのだ。
ハイブランド愛好家として知られる日本の“大女優”も、なんでこういうものにこれだけのお金をかけてきたのか自分でもわからない。何の意味もなかったと、あるインタビューで答えたのはちょっと衝撃的だった。改めてブランド物ってなんだろう、そんなふうに考えさせられたもの。

もちろん、だからといってハイブランドの素晴らしさが変わるわけではない。ずっと欲しかったバッグを手に入れることで生きるパワーを得たという人は少なくないわけだし、そのバッグに背中を押されるように、毎日元気に玄関を出て行く人もいる。もちろん価格を見ずに買う人にとっては当たり前のワードローブ。それは揺るがぬ事実で、ハイブランドそのものを否定する気持ちは全くない。

でも、こんなことってないだろうか。自分でも説明がつかないブランド信仰に取り憑かれるように、気がついたら100万円超えのバックを買うためにこそ日々仕事していたみたいなこと。もっと言えば、まるでそのために生きているような暮らし方になってしまっていること。そして1番厄介なのが、新作買いにハマってしまうこと。ハイブランドは新作を持っていないと意味がない、新作でないと恥ずかしいという強拍観念に囚われがち。だから、あっという間に賞味期限が切れて価値が下がるものばかりを買って、落胆を繰り返してしまうこと。



●夢から覚めたように、
本当に望んでいた自分に出会う時

それが自分にとって何の意味も持っていなかったことに気づくと、まるで夢から覚めたようにブランドに囚われていた自分から解放されるはずなのだ。その時、大げさではなく人生観が変わったような感慨を持つのだろう。そのくらい物質欲の呪縛は強烈なもの。ブランド物に限らない。あらゆる物質は、人の人生よりも重要なわけがないのに。

それに気づいた瞬間、物から心へと優先順位が変わるわけで、その100万円があったら一体何ができるのだろう、何が起きるのだろうと視野が広がり、意識が躍り、想像もしなかった喜びが押し寄せるに違いないのだ。 物質的な喜びはそれを手に入れた時がピーク、でもその金額を“経験”に費やそうと考えた時、未来はみるみる広がっていく。果てしないまでに。だからそろそろそこから解放されてもいいのかもしれない。
そのきっかけになるかもしれないプチプラバッグの登場。そういう大切なことに気づかせてくれるかもしれないのだから。するともう“そっくりバッグ”も必死で手に入れようとは思わなくなるのだろう。それは言ってみれば、新しい自分との出会い、価値観が変わるとはそういうこと。大切なものの優先順位が変わるとはそういうこと。
もしも、何らかとても重たい欲が自分を支配していることに気がついたら、ぜひそこにいる自分は“望んでいる自分”なのかをもう一度自分に問いかけてみて欲しい。全く違う自分が、自分を待っているはずだから。


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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。