Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2025年5月 蠍座の満月🌕

毎日毎日、“祈るようにお手入れする”ススメ

神社仏閣で合掌する時、
なぜ後ろめたさを感じるのだろう?

初詣はもちろん、神社仏閣を訪れた時、旅先で教会などに立ち寄った時、とりあえず誰もが祭壇の前で手を合わせるのだろう。でもそういう時、少しだけ後ろめたさを持ってしまう人が少なくないのではないだろうか。
何らかの宗教を持っている人は別として、それこそ“苦しいときの神頼み”で、そういう時だけ手を合わせて願い事をしてしまうことに。
そもそもが“祈ること”に対して慣れていない上に、祈りの意味も深くは理解していないために、いざ祈ろうとするとちょっとぎこちなくなったり、これで良いのだろうかと戸惑ったり。大切な行為であるのはわかっているからこそ、もう少し上手に祈れないものかと思ったりする。
そもそも祈りが宗教を持つ人たちだけの習慣であると決めつけるのは、大きな間違い。信じているものがあろうとなかろうと、祈りは“人間の本能的な行為”であると考えるのが正しいらしい。
祈りは、一言で言うなら“心を整えるための所作”。たとえば、瞑想も祈りの一つの形であると考えるとわかりやすい。なぜなら、何を唱えるか?の前に、所作そのものに大きな意味があるからなのだ。



両手のひら合わせると、
エネルギーが体を巡り、驚くべき効果が?

人間の手のひらから生命エネルギーが出ているというのは、もはや1つの常識だけれど、もっと厳密に言えば、右手からは右回りのエネルギー、左手からは左回りのエネルギーが出ているのだとか。つまり、両手のひらを合わせることによって、そのエネルギーが体の中を巡っていくと言うこと。
そういう意味からも、祈りの効果について研究が始まっていて、一説に“免疫機能の改善効果”があるとされている。ストレスによる免疫低下……どころか、"うつ"にも良い影響があるということが、科学的にも証明されつつあるのだ。アメリカでは実際に、祈りを行った患者と祈りを行わなかった患者で、病気の症状に大きな差が生じたことさえ証明されているほどなのだ。
今後、この研究はより具体的に進められていくはずだが、確かに手を合わせるだけで心が落ち着くのは誰もが体験済みのはず。
でも、慌てていろんな願い事をまとめてしてしまうので、実際にはいつも心の落ち着く暇もなく、そそくさと祈りを止めてしまうはずなのだ。



祈りは、
願い事を叶えるためのものではない⁉︎

だからあえて言うなら、祈り“は願い事をするためのもの”ではない。もちろん大きな意味での願いを託すのは、祈りの本来の意味にも通じるけれど、自分の欲を満たすための祈りであってはいけないと言うのだ。あくまでも、他者の幸せや安寧を願うのが祈り。大切なのは、利他の精神なのだ。
もちろん神社などで「家内安全」や「無病息災」、そして「心願成就」などを祈願として唱えるのは良いけれど、むしろ日常的に自分の中の内なる神と向き合う時は、もっともっと大きな祈りにしてほしいのだ。
つまり、何か具体的なことを願うというより、広く安寧が訪れますようにと唱えながら、 意識して心静かに手のひらを合わせて精神を整える、そういう時間にしてほしいのだ。あるいは、今日あることへの感謝。そして、今日も前向きにイキイキと生きていきます! という命の宣言。そう、だから見守っていてくださいというお願いをするのはありなのだ。ともかく、自分の欲を祈りに載せることだけはやめたいものである。



だから、顔の前で手を合わせ、
香りをゆっくり味わうように深呼吸

とは言え、日々の生活の中に祈りの行為を差し込むと言うのはけっこう難しいもの。いつ? どこで? どんなふうに? と、そこから戸惑うはずなのだ。だから提案。日々のスキンケアにおいて、お手入れに祈りを組み込むと言うのはどうだろう。
お手入れを始める前でも、またお手入れは終えた後でもいい。化粧品の香りをゆっくりと確かめるように、味わうように、顔の前で手を合わせ、目を閉じる。そしてゆっくりと深呼吸。免疫機能を高めるということが、スキンケアの効果にもつながっていくわけで、この行為自体、スキンケアの1つでもあると捉えることもできるはずなのだ。もちろん、大好きなフレグランスを指先にまとって、それを全身で味わうように合掌してもいい。
ともかくそんなふうに、今日から祈るようにお手入れを。1日で1番心穏やかな、素晴らしい時間になるはずだから。



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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。