「子どもが産まれたら、自分の時間がなくなるよ」
「自分の時間」って、何だろう。お腹が大きかった頃の私の頭の中に浮かんでいたのは、お茶をする時間や美術館へ行く時間、映画を観る時間、レストランに行く時間など、日々の中にたまに存在する、わくわくドキドキする時間たちだった。しかし、それはとんでもない勘違いだったのだ。
トイレに自由に行く時間、椅子に座って食事をとる時間、お風呂に入って髪を洗いリンスを塗る時間。言うなれば多くの人々の生活の中に、当たり前のように組み込まれている時間が、赤ん坊が産まれてから存在しなくなった。これが先輩たちが言っていた「自分の時間」だったのかと知った。
しかし、このことが悲しいとか大変だとか、そんなことは思わない。これはこれでとても面白く、人生のご褒美のような時間だと思う。毎日がまるでトライアスロン。別の言い方をすれば、売れっ子芸能人の分刻みのスケジュールをこなしているような、いつか終わりが来る幸せな日々である。
赤ん坊と生きる今の生活が始まってから、手放せなくなったものがある。それはリンスインシャンプーだ。使い始めたきっかけは、先に母親になった親友が出産祝いにくれたから。リンスインシャンプーは幼い頃に使っていたイメージが強く、大人の階段を上がるごとに遠のいていった存在だったので、また手に取るなんて思いもしなかった。
赤ん坊は産まれてすぐの頃は、だいたい3時間置きに目を覚ます。その度に乳をやり、寝かしつけをするのだが、あっという間に2時間経っていて、次の起床まで1時間を切っている。外にも出ず、運動もしていないのに、1日の最後には汗だくなので、急いでお風呂に入る。そんなとき、リンスインシャンプーに助けられた。
赤ん坊が少し大きくなって一緒に湯船に入るようになると、それはそれで時間との勝負である。赤ん坊が湯冷めしないように、目を離した隙に転んでしまわないように、何事も急いで済ませる。ある時は赤ん坊を片手で抱っこしながら、空いている方の手で髪を洗って流す。そんなときもリンスインシャンプーが本当にありがたかった。
リンスインシャンプーと付き合い始めて知ったのは、想像していたよりも種類が豊富だということ。無香料のものはもちろん、甘やかなものやスッキリとした香りもある。パッケージも様々で、私は落ち着いた配色のものが好きだ。浴室に並んでいるのを見るだけで、うれしい気持ちになる。自分を労る時間は減ったけれど、そのぶんお気に入りのものを身の回りに置くように心がける様になった。私の毎日のご機嫌を取れるのは、私なのだから。
時短やコスパという言葉をここ数年よく耳にするけれど、私はそういった言葉たちが好きではなかった。妊娠してからは特に、その言葉たちから距離を置きたいと思うようになった。なぜなら子どもを産み、育てるということは、そういった言葉の真逆にあるからだ。ならば私はとことん思う存分、自分の時間を子どもに使いたいと思った。この時代に、そういう生き方ができるなんて、なんてうれしいことだろう。
しかし私は今、時短とコスパに助けられている。リンスインシャンプーのおかげで、髪を洗う時間が短くなったし、水道代とシャンプー代も以前より少し安くなっていることだろう。毎晩ものすごいスピードで髪を洗いながら、時短とコスパを考えて商品開発してくれている人たちに、感謝の気持ちでいっぱいになる。今の私にとっての「自分の時間」は、赤ん坊と過ごす他愛のない時間で、その時間を少しでも増やすために、他のことはできるだけ早く済ませたい。でも私はわがままなので、自分のこともできるだけ大切に、甘やかして生きたい。そんな私にとって、お気に入りのリンスインシャンプーはオアシスのような存在なのかもしれない。