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Kaoru Saito's Column

<第一章> Hygge

私が一番住みたい国には、
この上なく美しい光と空気と、"ヒュッゲ"がある。

一番行きたい国……自分にとってそれは、昔からフィンランドだった。北欧がブームになるずっと前からの憧れ。なのに、長い休暇が取れたら、と思っているから、なかなか行けない。だからまだ一度も行けていないのに、憧れがつのって気がつけば、"行きたい"どころか、"一番住みたい国"になっていた。

きっかけは、ある日本人ピアニストが"音楽留学"では極めて稀なフィンランドに留学していたことを、疑問に思ったから。しかもその理由が、たまたま訪れたフィンランドの森で、斜めから差し込んでくる幻想的な光の美しさに魅せられたから…。結果的にそのピアニストはフィンランドに移り住んでしまう。

一方で、オーガニックコスメブランド、フランシラが古くから所有する"フランシラの森"は都会の3000倍も空気が綺麗である事実を知って、そこに自分の身を置いてみたいと言う衝動にかられたことも理由の1つ。そして何よりも、フィンランドをはじめとする北欧に息づく、とても素敵な価値観に心を動かされたからである。

ご存知のように北欧諸国は、国民の幸福度の高さが世界のトップクラス。社会保障もまた子供たちの教育水準の高さも、世界一である。データだけを見ても、幸せな国々だということがわかるけれど、それ以前に、北欧には"ヒュッゲ"という概念が人々の心に無理なく宿っていて、それが幸せ実感に繋がっている。それは"日常の心地よい時間や場所に、小さな幸せを感じること"を最も尊いとする価値観。この"ヒュッゲ"自体が欧米でブームとなり、日本でも注目されつつあるが、その意味を一言で表現する言葉が日本語にはないという。あえて言うならば"ほのぼの"、あるいは"くつろぎ"、"癒し"。

例えば、家の中で家族が楽しくくつろいでいる、それ自体がヒュッゲであり、自然の中でピクニックをするのもヒュッゲ、もっと単純に、お茶を飲みながら音楽を聴くことも、入浴剤を入れたお風呂にゆっくりつかることも、ただアロマを炊くことも、すべてはヒュッゲ……。逆から言うなれば、ブランド物に囲まれ、豪華な家に住み、高級車を乗り回すより、もっともっと身近な"小さなこと"に幸せを感じる心。つまり、お金を稼ぐことよりも、お金のかからない、穏やかな時間、豊かな心の方が人生において大切、そう思うことがヒュッゲなのである。

ひょっとすると、これを読んでくれている人の多くが、こう思うのかもしれない。まさに、まさに、私が求めていたのはヒュッゲだったのだと。生き方において自分が理想とするのは、ヒュッゲだったのだと。

自分自身、そのヒュッゲに体ごと浸りたい、五感で味わいたいと本能で思うからこそ、フィンランドと言う国に憧れ、いつの間にか住みたい国にしていたのだと思う。自分自身それは"魂の求め"だったような気がするのだ。ヒュッゲ……本当に素敵な、気づきである。

齋藤薫美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。

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