Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年4月 蠍座の満月🌕

小さな片付けで、
大きな幸せを作る方法

●部屋の中も、心の中も、最近乱れがちというなら聞いて欲しい

例えば寝坊した朝、自分の身繕いもままならない上に、アレがないコレがないと、家の中をぐちゃぐちゃにして出かけてしまうことって少なくないと思う。こういう時って大体が頭に血が昇り、集中的にストレスを溜め込んでいる。しかも、たとえ時間に間に合ったとしても、なんだか気持ちが高ぶったまま、あらぬ失敗をしてしまったり、あまり良いことが起こらないもの。
そういうまとまりのない一日を終えて家に帰ると、また家の中がごちゃごちゃ、そういう積み重ねが慢性的なストレスをもたらすと同時に、日々の暮らしが乱れていってしまうきっかけになるとしたらどうだろう。

だからこんなふうに混乱した日がたびたびあるようなら、意識してやってほしいことがある。“テーブルの上の雑誌や書類の四隅をトントンと揃えること”。最も小さな片付けと言ってもいいかもしれない。とりあえず目の前の書類の四隅を揃える……それだけでいいのである。
じつはこの、“四隅を揃える行為”には、心を整える確かな効果があると言われる。そんなの当然じゃない? というかもしれないけれど、じつは心理学的にも不安を取り除き、精神的な安定をもたらすことがわかっているのだ。


●日ごろ目にしているモノの形が、人の感情を左右する

人は丸いものに心を寄せ、角張ったものにはやはり一瞬抵抗を見せるという生理をもっている。人間の感情には、モノの形が知らず知らず影響を与えていて、丸いものは私たちに安心感や親しみやすさを与えてくれるが、反対に角ばった形状は無意識のうちに警戒心やストレスを引き起こすと言われるのだ。それがたとえ書類の角であっても……。
これは全く意識下の話で、日々見慣れているものであっても、無意識にその形を目にする時、わずかに生まれる感情の数々が、その日の気持ちの向きを変えてしまうことがあるという。

つまり、四隅を揃えるのは、その尖った角の数を減らす行為に他ならない。バラバラになった書類をまとめる作業にはそういう意味があったのだ。

そういえば洗濯物をたたむ時、タオルやハンカチなどをきちんと角を揃えて畳まないと、なんだか気持ち悪いのも、それ自体が心理的な不安やストレスになるからだ。
何もこんなにムキになって四隅を揃えなくても……そう思ったりすることもきっとあるはずだけれど、結局わずかでも角がずれているのを見たくなくて厳密に揃えてしまう、それも自分の心の状態がそうして欲しい、と望んでいるからなのだ。
加えて言うなら、トントントンと音を立てて揃えることが、さらに心の乱れを整えるような行為になっていることにも気づいてほしい。ちょうど茶道のお手前のように、音も含めた一連の所作がまとめて心の整理整頓につながっているということなのだろう。


●とても些細な小さな習慣が、大きな成果をもたらす時

言うまでもなく、几帳面な人のデスクは何であれ角が揃っている。それはもうそうしないと済まないというほどの、本能のなせる技。逆に言えば、それを習慣にしているうちに、目に入ってくるものはことごとく揃えていかないと気がすまなくなり、その結果いつの間にか几帳面な人へと導かれていくということなのだ。

本当に些細なこと。でも、そういう小さなことの積み重ねで、人の日常は出来ていて、その人の精神状態が構築されていることにも気づいて欲しいのだ。だから家でもオフィスでも、ちょっと目についた雑誌のばらつきや書類のばらつきをその場でトントンと整える癖をつけよう。そうするうちに、知らず知らず心の平穏が基本になっていき、人格にまで変化をもたらすようになる。
つまり小さな習慣が人の人格を作っていくこと。また、小さな片付けが、大きな成果として、大きな幸せをもたらすまでを知っておくべきなのである。

read more

Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。