Kaoru Saito’s Column

FULLMOON

2024年5月 射手座の満月🌕

人を褒めると、
自分がキレイになれるという不思議

●人に見られて褒められて、
アイドルは数ヶ月で劇的にキレイになる?

人は褒められるとキレイになる……これは昔から散々言われてきたこと。80年代90年代、アイドル全盛時代には、その実例が本当によく見られた。デビュー直後から人気のアイドルはずんずんと目に見えてキレイになっていくのが普通で、それは人に見られ、人から褒められ、大勢に騒がれるからだとわかっていたから。

アイドルほどその変化が劇的な存在はなく、実際にわずか数ヶ月で別人のように見違えるアイドルも少なくなく、キレイに痩せるのはもちろん、脚がまっすぐになったり顎が細くなったり、いろんな肉体的な変化があるのを当時はよく目にしたものだった。

そんなふうに、人をキレイに磨きあげるのは、周りの目や反応。とりわけ褒められることが何よりも大きな効果を生むのだと思い知らされた。


●褒められるとキレイになるメカニズムが
科学的に証明された

もちろん当時は根拠なく“そうに違いない”と言うレベルだったものが、近年になって、なぜ人に褒められるとキレイになれるのかが科学的に解明されることになった。

他者に褒められることによって、脳内のある神経が刺激され、ドーパミンが放出されるとともに、ストレスホルモンが抑えられ、強い幸福感に包まれる。そのスイッチによって表情が輝き美しくなるのは確か。ドーパミンは快楽ホルモンとも言われ、強い快感をもたらすが、またその快感を得るために意欲がわき、もっと頑張ろうとするから人はさらにキレイになっていくと言う仕組み。

そうした法則が科学的に証明されることで、同時に注目されるようになったのが、逆に“人を褒めること”の効用。いやこれまでも人を褒めると幸せになれる的なざっくりした方程式はあったものの、人を褒めると自分自身もキレイになるという見方が急浮上したのだ。

一説に、相手を褒めることによって、その相手が喜んだり、意欲を持ったりしてくれる様子を見ると、それを成果として実感するため、褒められた時と同じように、脳内にドーパミンが分泌されるから、そういう見方も生まれてきた。


●人を褒めると、幸せホルモン、オキシトシンが分泌される?

でもごく最近は、人を褒めることによって、愛情ホルモン“オキシトシン”の分泌が高まるからという考え方が主流になってきている。

このオキシトシンは、言うまでもなく今美容界で最も注目されているホルモン。母親と子供が触れ合うときに生まれることから“接触ホルモン”とも呼ばれるもので、だから肌のお手入れにおいて、自分で自分の肌を触ることでも、このオキシトシンが分泌されると言う考え方がにわかに注目されているのだ。

とすれば、人を褒めることで、二重に“幸せホルモン”が働くと考えてもいいのかもしれない。それは人を褒めたことに対する、ご褒美のようなものに違いないから。

ただそのご褒美が欲しくて自分のために人を褒めるのでは本末転倒。そのあたり、人間の体は実に精密にできていて、歯の浮くようなお世辞を言ったところで、ホルモンの分泌はないと考えるべきなのだ。

あくまでも、心から人を褒めることができてこそのご褒美。愛情ホルモンと呼ばれるように、人を心から褒める温かい気持ちがなければ生まれないホルモンなのだ。

もっと言えば、常に人の良いところを見つけて褒めて心地よくさせることが当たり前になっていて、生き方の中にそれが組み込まれているような人こそが、そういった二重のホルモンの恩恵を受けるのだと考えるべき。

本当に気負うことなく自然に人を褒める人って、大体が本人も美しいもの。褒めてキレイになるのは、もちろん簡単ではないけれど、そういうものが本当に身に付いた時、人は人生レベルで美しくなるということでもあるのだ。

いずれにしても褒めて褒められて、そういう関係が築ける友がいることも、1つの大切な美容なのである。

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Kaoru Saito

齋藤薫

美容ジャーナリスト
/エッセイスト

齋藤薫

美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。