投稿日: 2025.07.31 更新日: 2025.08.01
みなさん、こんにちは。アンチエイジングの鬼、勝田です。
今年から始まったこの連載もいよいよ４回目。前回は「活性酸素を過剰に発生させる原因となる食べ物」「こんなん食べてたらエイジング一直線」であると鬼認定しているものについて、だいぶ濃厚に書いてしまいました。「エナジードリンクや化学調味料、合成着色料、人工甘味料に溢れかえってる現代で、どないせいっちゅーねん！」というお声もあるかと思いますが、何をおっしゃいますやら！そんなあなたのためにコスメキッチンやビープルがあるんじゃないですか！もちろんアムリターラもね！
さてさて、今回はこの季節にあらためてしっかり語っておきたい「光老化」について書きたいと思います。ご存知の方も多いと思いますが、肌の老化原因の約8割は光老化が原因と言われています。
さて、光老化とは何でしょうか？例えば自分の手の甲を見てみて下さい。次に鏡か何かで自分のお尻を見てみましょう。綺麗に手をケアして美しく保っている方もいるかもしれませんが、それでもやっぱりお尻のほうが白くてツルツルで手よりはハリがあったのではないでしょうか？同じ一人の人間の肌なのに不思議ですよね。
日頃から光を浴びやすい手の甲と、常に衣類に覆われて下のほうにあるお尻。紫外線の一番の肌への影響は本当は日焼けすることではなく、徐々に蓄積されて起こる、こうしたお肌の変化にあります。
日焼け止めのＳＰＦの数値で効果を表していることでおなじみのＵＶ-Ｂは、皮膚の比較的浅いところまでしか届きませんが、エネルギーは強いので赤くヒリヒリと炎症を起こす原因となります。皮膚細胞のＤＮＡに傷をつけ、シミやしシワを作ったり、大量に浴びることで皮膚ガンを発生させたりすることもあります。
日焼け止めのＰＡの＋の数で効果を表していることでおなじみのＵＶ-Ａは、ＵＶ-Ｂよりはエネルギーが弱いけれど波長は長いので、より深く皮膚の真皮にも届き、弾力やハリを保つためのコラーゲン繊維やエラスチン繊維を変性させ、皮膚の老化を早めます。
UV-Aによるジワジワとくる長期的な影響がかなり大きいですが、もちろんUV-Bも波長は短いけれどエネルギーは大きいので、それなりに影響も強烈です。強いUV-Bの紫外線を浴びると、赤くなりますよね？あれは皮膚細胞のDNAについた傷を修復させるために、皮膚表面の毛細血管が膨張して血液が集まってくるから赤くなるのです。
太陽を浴びて、もし肌が赤くなっていたら、それだけDNAにたくさん傷がついたよ！ってサインなので、これはもうアンチエイジング的には一大事です。 もちろん私達には、「DNA修復酵素」という強い味方が備わっていますから、傷つきっぱなしというわけではありません。一定の時間後、かなりの傷は修復できます。ただ、100％修復することはなかなか難しいので、光の強さや浴びた長さによっては、ほんのちょっと傷が残ってしまい、これの蓄積が光老化です。
しかし、実は地上に降り注ぐ紫外線の95％はUV–Aです。しかも肌の本体である「真皮」にまで到達することが大問題で、ハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンを切って損傷を与えてしまいます。それだけでなくUV-AはMMP（マトリックスメタロプロテイナーゼ）という酵素を活性化することで、大切なコラーゲンをどんどん分解してしまうのです。
表皮は２８日で生まれ変わりますが、真皮は生まれ変わりに約２年かかります。修復はもちろん出来ますが、すぐに生まれ変わってくれないので、やはり傷が蓄積し、むしろこちらのほうが長期的には影響が大きく、肌のたるみや、シワが形成されてしまうのです。
グラフを見ると分かるように、UV-Aの影響は3月くらいから注意が必要で、５月のUV-A量は８月とそう変わりません。UV-Aは窓ガラスも雲も通り抜けてくるので要注意です。
紫外線が肌にあたると体内でビタミンDが合成されるので、光を避けすぎるのは良くないと言われますが、ビタミンDの合成に関わるのは直射日光のUV-Bだけです。窓ガラス越しの光（UV-A）を浴びても光老化しかないということだけは、肝に銘じておきましょう！
そして私はなにも顔でビタミンDを合成しなくていいと思っています。環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」を参考にしますと、例えば真夏なら晴れた昼に、腕か足を露出して（皮膚の25％）約３分太陽を浴びる、そして真冬であれば、晴れた昼に手を露出して（皮膚の12％）約50分太陽を浴びると1日に必要最低限な10μgのビタミンDが生成されるそうです。ビタミンDは椎茸やきくらげなど食べ物からも摂取出来ますよ。
私たちの目に色として見える「可視光線」には、紫、青、緑、黄、橙、赤などがあるのですが、その中の青い光「ブルーライト」は、肌に日焼けを起こすことこそ、ほとんどありませんが可視光線の中では紫外線に次いでエネルギーが強く、しかも真皮まで差し込んでいる長い波長なので、これまた長期的に見ると光老化の原因となります。
ブルーライトは太陽光だけでなくスマホやPCのLEDバックライトにも使用されているので、顔にとても近い位置で四六時中お肌に差し込んでいる現代社会は由々しき事態です。
これは年齢が若くても同じで、新陳代謝が比較的早いからダメージが今のところ目立ちにくいだけで、こうした光による肌への影響は「蓄積型のダメージ」であることは肝に銘じておきましょう。
第二回の連載で、生きることは活性酸素とのあくなき戦いであることを書きましたね。活性酸素とは、ただ生きているだけで最低でも呼吸から取り込む酸素のうち、約２％分は体内で発生してしまうエイジングを早める毒性のある酸素のことです。
普通に生きているだけでも発生しますが、現代社会の宿命とも言える大気汚染、電磁波、放射能、喫煙、寝不足、多剤処方の薬、多めの飲酒、激しい運動、精神的ストレスなどで大量発生してしまいます。
紫外線やブルーライトが肌にあたった時にも活性酸素は発生していて、光そのものだけでなく、それによって発生する活性酸素でお肌のコラーゲンやエラスチン、DNAを破壊し、肌細胞にかなりのダメージを与えているのです。実は光そのものよりも、こちらの影響のほうがもっともっと強力とも言えます。
第二回で書いたように、活性酸素には主にスーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素の４種類がありますが、紫外線が肌にあたると実はこの４つともの活性酸素が発生し、スーパーオキサイドは肌のたんぱく質を変性させて乾燥させ、透明感を失う原因となりますし、過酸化水素はシミ、シワ、皮膚がんの原因となり、もっとも凶悪なヒドロキシラジカルに変化して更に肌を攻撃します。しかし肌への影響がもっとも大きいのは一重項酸素という活性酸素で、シワ、シミ、皮膚がんなどの一番の原因となります。 そう、光老化の本丸も、実は活性酸素なのです。
私が光老化を防ぐためにやっていることはいろいろあるのですが、まず紫外線量の多い10時から14時に外出する時は、ツバが「10cm以上」の帽子をかぶること。夏はこの時間帯以外でも常にキャップをかぶっています。こうするとこれだけで、実は顔の70％はカバー出来ちゃうのです。
70％というのは、かなり影響が大きくないですか？もちろんそれ以外にも、春夏は日傘やサングラスなどもカバンに常備しています。
もう１つはカロテノイド、ポリフェノール、ビタミンEの多い食べ物を食べたり、肌に塗ったりすることです。
21歳～59歳の女性66名の肌の写真を撮り、その中から30代と50代からそれぞれ4名、肌の美しい方と普通の方を選び、その方々の角質層の中の酵素活性を調べると言う、実に興味深い実験データを見たことがあります。
すると、見た目が美しい肌の方は、すべてにおいて角質内の酵素活性が高かったのです。
この酵素は何かというと、不要な角質を剥がれやすくする酵素や、潤い物質NMFを産生する酵素、そして注目すべきは活性酸素を無害化するSOD酵素やカタラーゼ酵素です。
こういう酵素活性は、遺伝的な面が大きいのでしょうけど、私はこの実験結果を見て逆に希望を持ちました。だって真皮ではなく表皮、しかも一番上の角質層の酵素活性だったからです。角質での活性酸素処理などでお肌の美しさが変わるのですから、自分の自前の酵素活性がイマイチなら、植物の力を借りればいいと思うのです。
だって角質は、わずか0.02mm。肌の一番上ですよ。そんなに深く浸透する必要もないわけです。植物のフィトケミカルを肌に纏えばいい！
一重項酸素などの皮膚に害をもたらす活性酸素を無害化する成分が、植物の中に発見されています。アスタキサンチン、βカロテン、ルテイン、リコピンなどのカロテノイドやプロアントシアニジン、ケルセチン、エラグ酸などのポリフェノール、ビタミンEです。
中でも、アスタキサンチンの持つ力はすごいです。アスタキサンチンはカロテノイドという天然色素の一種で、鮭、蟹、エビ、おきあみ（クリル）などの魚介類に多く含まれる色素ですが、元はヘマトコッカス藻など赤い色をした藻に含まれ、そこから食物連鎖で取りこまれていきます。強力な抗酸化作用があり、βカロテンやビタミンＥの1000倍近くの力があることが判明しています。
そして活性酸素の中でも、光老化の本丸である一重項酸素に対する消去能力がかなり高いことが分かっています。このアスタキサンチンを肌にまといたくてクリームやリップを作りましたし、サプリメントも作りました。
アスタキサンチンもカロテノイドですが、このカロテノイド系色素を十分摂取していると、皮膚の老化防止に役立つということが、2013年のドイツの研究でも発表されています。
8週間にわたって毎日1 mgのβ-カロテン、2.2 mg のルテイン、0.7 mgのゼアキサンチンおよび、0.4 mgのリコピンを含むカロテノイドサプリメントとプラセボを投与された22才～66才24人の健康な被験者の皮膚と皮膚脂質の活性酸素保護の様子を測定したところ、カロテノイドを摂取している群で、優位に皮膚のカロテノイド濃度が上昇し、皮膚における活性酸素除去活性が高まったそうです。 この研究以外でも適切なカロテノイドの投与が紫外線に対する光防護、皮膚老化の加速防止になるという研究がなされています。
論文：Meinke M. C. et al. 皮膚と皮膚脂質のラジカル除去能力への食物カロテノイドの影響。「European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics. 2013; 84(2):365-373」
βカロテンはにんじん、かぼちゃ、ほうれん草、モロヘイヤ、春菊、ニラなど、ルテインは、ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリー、ケール、マリーゴールド、ゼアキサンチンはかぼちゃ、ブロッコリー、とうもろこし、オレンジ、マンゴー、桃など、リコピンはトマト、スイカ、柿などに多いです。
春夏は意識してこうしたカロテノイドを摂っておくと良いと思います！
カロテノイド以外ではポリフェノールも大切。中でも「プロアントシアニジン」には注目しています。カテキンがいくつか結合した構造をもち、きわめて強い抗酸化作用を示すポリフェノールで、全種類の活性酸素の中和だけでなく、酸化酵素阻害作用も合わせ持っています。クランベリーやりんご、ぶどうなどにも多く含まれていますが、なんといってもダントツに多いのはニュージーランドの松樹皮です。ニュージーランドでは世界最高の平均成長速度で松が生育します。有名なフランスの松よりポリフェノールが多いのは、ニュージーランド北島中央の松なので大気汚染もなく、紫外線がとにかく強いという環境が大きいのだと思います。
他にもオレンジから抽出したアントシアニン、フラバノンなどのポリフェノールは過剰に発生しすぎるとシミの原因となるメラニンを作る力を阻害したり、赤くなるサンバーンを40％も抑えるエビデンスがあり、わかめのポリフェノールもメラニンの生成を抑え、シミを抑制します。私はこうした植物の力を利用して飲む日焼け止めとも言えるサプリメントを開発して、そもそもが光の影響を受けにくい肌を作ることにも注力しています。
飲むだけではなく、ポリフェノールや先ほど書いたカロテノイドの力を利用して美容液やクリームを作り、これをお肌に纏うことで、角質層の抗酸化力を上げて、紫外線の影響を受けにくい、赤くも黒くもなりにくい光老化抵抗力の強い底力のある肌を作ることも大切にしています。
植物の力で光の影響を受けにくい肌にしておくと共に、活性酸素との皮膚上の戦いを最小限に済ませるために、日焼け止めで光を出来るだけ遮断することは、言うまでもなく大事なことです。
しかし従来の日焼け止めに使用されている紫外線吸収剤や散乱剤の酸化チタンや酸化亜鉛では、紫外線までは吸収、反射出来ても、ブルーライト以降の可視光線の長い波長を処理するのは不得意でした。日焼け止めに使用されている粒径の酸化チタンは380nmほどの光までしか反射できず、酸化亜鉛は少し長い波長390nmの波長までですが、これは全部紫外線領域です。
しかも酸化チタンは本来、光触媒にもなるほど、光があたると活性酸素を発生させてしまうミネラルです。トイレの便座の樹脂にも練りこまれているのは、活性酸素で菌を殺してしまうからです。酸化亜鉛も、チタンほどではないですが活性酸素を出す素材です。化粧品に使われているのはルチル型という活性が少ない結晶構造のものですが、SPF値を高く出すために粒子を100nm以下に小さくナノ化すると酸化活性が高まってしまいます。
こうした活性酸素問題以外にも、小さすぎて皮膚から血中に入ってしまう健康被害の可能性や、洗顔で洗い残しがあってもウイルスサイズなので見えづらく、肌に残留しやすい問題、そして珊瑚への悪影響なども指摘されています。かといって粒子を大きくすると今度は顔が真っ白になってしまうのです。
化粧品開発者としてこの問題に長年向き合っている時に出会ったのが、レアアースの一種であるセリウムというミネラルでした。セリウムは化粧品原料としてはこれまであまり使われていませんでしたが、なめらかで丸みを帯びた粒子に加工することに成功した研究者の方々と出会いました。
セリウムがすごいのは、ナノ粒子にしなくても紫外線だけでなくブルーライトや近赤外線の一部まで反射できることと、チタンや亜鉛ほど白くないので大きい粒子でも白浮きしないこと。もう１つすごいのは、それなのに光活性がほとんどないので活性酸素で肌を傷める心配がないこと。更に最高にすごいのが、酸化したものを元に戻す還元力があることです。
これは面白いと思って開発に入ったのが9年前です。コーティング剤も一般的なシリコーンオイルではなく天然成分を使用した鬼仕様のものを作ってもらいました。
これは、あらゆる光を照射して、どのくらい透過できたかを計測した実験データ。出来上がったパウダーを、ガラスプレートにのせて透過率を計測したグラフがこれです。
UV-B (280～315 nm)は、98.4％くらいカット出来ており、UV-A(315～400 nm)が97.4％～98.5%カット出来ています。驚くのはここからです。波長が長いブルーライト（380～500nm）も95.9％～97.7％ほどカットしています。そしてさらに長い波長の近赤外線(800nm以降)までも88.8％～91.9％もカット出来ています。 このセリウムを使って、クリームタイプの日焼け止めも開発したのですが、出来上がったのはべたつきも、重苦しさもなく、白くなりすぎることもなく、すーっと伸びて実に軽い使い心地の理想的な日焼け止めクリームです。セリウムの加工の仕方を変えることにより、活性酸素を4種類とも消去することが得意なものも新しく開発されたので、最近こちらを新配合してリニューアルもしまして、鬼の光老化対策はかなり万全に近い領域まで来たと自負しています！
最後に日焼け止めの塗り方についてお話しします。みなさんSPF値が高ければ良いと思っている方が多いですが、あれは被験者の背中にUVを照射して何も塗らなかった部位に比べて、日焼け止めを塗った部位の肌が赤くなったり黒くなったりするのがどのくらいマシなのかを人間の目で判定しているという、意外とアナログな検査であり、しかもどんなに高SPFでもジワジワとした汗により3時間もしたらある程度取れてしまっているので塗り直しは必須です。
こちらは顔の正面に紫外線を当てたら、どこに一番強く光が当たるかのランキングなのですが1位と2位のTゾーンに関しては角質が厚く皮脂も多いため、実はあまりダメージを受けにくいです。問題は3位と4位の目じりや頬骨の上です。ここは皮膚も薄く皮脂も少ないのに紫外線がたくさん当たりやすい部位なので光老化の影響も大きいですし、シミの80％もこの部分に出来ます。 朝、日焼け止めを塗る時には頬骨あたりを2度塗りすることをおすすめします。そして塗り直す場合も、めんどうな場合は全顔でなくても頬骨部分だけにささっと塗り、あとはファンデーションなどでカバーすれば良いと思います。
さぁ、ポイントをちゃんと押さえたら、これで光老化もこわくない！体の中からも外からも、サビない人生を送りましょう！
1968年大阪府生まれ。カイロプラクターとして骨の歪みの矯正から、食事や生活指導も行う代替医療の治療家。30代からエイジレスな生き方の研究を始め、2005年に始めた「アンチエイジングの鬼」が超人気ブログとなる。2008年、国産オーガニックコスメ＆フーズブランドの草分け「アムリターラ」を創業し、現在も代表と商品開発を兼務。
アンチエイジングの鬼 コスメキッチン出張所
株式会社AMRITARA代表 勝田小百合
