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Kaoru Saito's Column 綺麗な女の引き寄せ力

<第二章> Qui rit guerit

見知らぬ人と人が微笑み合う……
それは幸せを2倍にする素晴らしい瞬間

海外を旅して、いつも思うのは欧米はやっぱり"笑顔の数が多いこと"。旅先で出会う外国人はもちろん、自分自身にも笑顔が増えることに気づくのだ。例えばホテルのエレベーターで、別の客と乗り合わせた時、とても自然に微笑み合う。お互い、まず視線を合わせて、うなずくように微笑み合をかわす。ビックスマイルから、わずかに口角を上げるだけの、とても小さな微笑まで、その度合いは様々だけれど、ほとんどの旅行者が笑顔で最低限の挨拶を交わしあうのだ。まだ幼い少女さえ、はにかむような笑顔を向けてくれる。

私はあの瞬間がとても好き。ふっと幸せな気持ちになれるから。旅の醍醐味と言う以上に、人っていいなと思えるから。たまたま同じホテルに居合わせただけ、きっともう二度と会うことがないはずの、異国での一期一会。それもわずか数十秒間の時を共有するだけ。でもちゃんとお互いの目を見て笑い合うのは、とても素敵な、とてもゴージャスな時間だ。

もちろんこれは本来が、自分は怪しい者ではないこと、危険な存在ではないことを、相手にそれとなく伝えていくための、ある意味とても大陸的な、防犯上の慣習から始まったこと。どこから敵が来るか分からないと言う警戒心が生んだ常識であるとも言われるのだ。ただ始まりはどうあれ、知らない者同士がお互い微笑みをかわすその瞬間、明らかに心がポッと温かくなる。心と体がポッと。それは他の事では置換のきかない体験。人はもっともっと微笑み合うべきなのだ。

残念ながら、日本に帰ってくると、あーそうだったといつも気持ちが下がる。エレベーターでは誰も微笑み合わない。 最も礼節を重んじる国なのに、微笑み合わないばかりか、他人同士あまり挨拶をしない。安全な国だからこそ、と言う見方もできるけれど、微笑みかけられる幸せと、微笑みかける幸せ、それを知らない日本人はとても損をしている気がするのだ。笑顔の効用は、免疫力を高めたり血圧を下げたりするだけでなく、幸せホルモン"エンドルフィン"の分泌を高めたりもしてくれる。エンドルフィンとは、モルヒネと同じように苦痛を和らげる脳内物質。つまりストレスや苦悩も、微笑みの分だけ和らぐのだ。それが一方的なものでなく、相手からも微笑みが帰ってきたり、こちらも微笑み返しをしたり、幸せホルモンは2倍になるのだろう。

笑顔は自分だけのものでは無い。相手があってこそ、成立するもの。相手も笑顔にし、相手から笑顔をもらうこともある。無意識に相手と同じ表情をしてしまう"ミラー効果"も手伝って、笑顔は笑顔を生み、幸せの連鎖反応を巻起こしていく。それもまた、"キリゲリ"の奇跡なのだろう。笑顔の数の2倍、幸せが増え、身も心も晴れやかになる、人と人との微笑み合い……日本でもいつか習慣になればいいのに。

齋藤薫美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。最新刊は初めての男モノ『されど、男は愛おしい』(講談社)。また『“一生美人”力人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)他、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など多数。

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